ようこそ我が家へ 池井戸潤

真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに、車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく。直木賞作家が“身近に潜む恐怖”を描く文庫オリジナル長編。

様々な登場人物が出てくる。主人公の倉田、息子の健太、ストーカー野郎、営業の真瀬、経理の摂子等々、「名も無きひとりの人間として」何にこだわって、どういう生き方をするのかが大切だ。

文庫の帯の「恐怖のゲームがはじまった」等の“煽り”はいくら池井戸ブームだからといってよろしくない。

ただ、池井戸さんの一連の作品のなかでは、(元)銀行員の奮闘の話と、一家のあるじ・市民としての話が同時並行的にすすむのはそれはそれでおもしろいものがあるが、どちらも中途半端で残念な感じがしないでもない。仕事の話の方ではもう少しハラハラドキドキしたあとの「倍返し!」がスカッとするし、一家のあるじの方は、親子関係をもう少し掘り下げてほしかった気もする。