母性 湊かなえ

「これが書けたら、作家を辞めてもいい。そう思いながら書いた小説です」著者入魂の、書き下ろし長編。

持つものと持たないもの。欲するものと欲さないもの。二種類の女性、母と娘。高台にある美しい家。暗闇の中で求めていた無償の愛、温もり。ないけれどある、あるけれどない。私は母の分身なのだから。母の願いだったから。心を込めて。私は愛能う限り、娘を大切に育ててきました——。それをめぐる記録と記憶、そして探索の物語。

各章が「母性について」「母の手記」「娘の回想(最後にリルケの詩)」という構成。
「愛能う限り」という思いあふれる母の気持ち。その思いがわかってそれに応えようとするのだが、その思いが母に伝わらない娘。そのこころのスレ違いが読んでいて痛い。
 「りっちゃん」の店の「りっちゃん」と、その店で働くバイトの「ヒデ」。そして、先輩の国語教師をこの店に案内した、この人は誰?男かと思っていたが・・・。
祖母と母、娘の三代が話しの中心ではあるが、他の登場人物の背景がもう少し欲しい感じがした。